
年々、検索エンジンでの評価におけるWebサイトの表示速度の重要性が増してきています。
Google は、以前から Webサイトの表示速度を検索結果のランキング要素としていましたが、さらに 2018年7月に「スピードアップデート」を行い、モバイルでの表示速度が遅いサイトの検索順位を落とすことを発表しました。
モバイルで 5秒以上ブログが表示されないと、4人中 3人もの閲覧ユーザーが離脱してしまうといわれていますので、検索結果に対する対策としてだけではなく、Webサイトで収益を上げるためには表示速度が重要なのは当然と言えます。
そこで、例年通り、当サイトで紹介している各レンタルサーバーに、現在世界で最も利用されている CMS(コンテンツマネジメントシステム)である WordPress を設置し、その表示速度をツールで測定・比較しました。
WordPress の表示速度調査実施概要
WordPress サイトの表示速度を調査するため、monitis というサービスを利用しました。
monitis はサーバーをモニタリングするための数多くのサービスを提供していますが、ここでは FullpageLoad という、ユーザーが実際にサイトの表示を行うのと同様の環境でサイトの読み込み完了までの時間をチェックできる機能を使用しています。
この機能で測定した、各サーバーにおける WordPress サイトの表示速度を比較します。
WordPress は、デザイン情報である「テーマ」、コンテンツ情報を含む「データベース」、画像などのデータを総合管理できるシステムですが、ユーザーからサイトを表示するリクエストがあるたびに、それらのデータを集め、サイトを構築し、データを送り返すという仕組みになっています。
そのため、サイトデータを送り返す Webサーバーだけではなく、WordPress を構成する言語である PHP やデータベースサーバーのパフォーマンスを含めた、レンタルサーバーの総合力が試されるシステムとも言えます。
そういう意味でも、WordPress の表示速度をチェックすることは、サーバーの真の実力を知ることにもつながる、と言っても過言ではないでしょう。
測定条件の詳細
今回測定を行った環境や条件ですが、すべてのサーバーに全く同じ内容の WordPress サイトを構築しています。
以下が、その詳細条件です。
WordPress のバージョン | ver.5.0 |
---|---|
WordPress のテーマ | Twenty Nineteen |
WordPress プラグイン | WP Multibyte Patch / Akismet / Hello Dolly |
PHPのバージョン | PHP 7.2 (※ロリポップ!と heteml・sixcore は PHP 7.2 利用不可のため 7.1)) |
PHPのモード | CGIモード (※ ConoHa WING/mixhost/ColorfulBox は LSAPI(LSPHP)) |
コンテンツ内容 | WPテーマユニットテスト (すべてのコンテンツをトップページに表示した状態) |
測定ツール | monitis 測定元サーバー(東京・新宿) |
測定期間 | 7日間(2019年3月中旬実施) |
測定内容 | WordPress サイトの表示速度 (20分ごとに計測を実施) |
測定状況の詳細 | 日本国内のサーバーから Webサイトの表示を要求し、 サイトデータの取得完了までの時間を計測 測定用ブラウザは Google Chrome を使用 コンテンツ内の特定の文字列が取得できるかもチェック |
プラグインに関しては、WordPress をインストールした際にデフォルトで導入されているもので、特に意味はありません。
ロリポップ!・heteml・sixcore は PHP のバージョン 7.2 が未対応のため、v7.1 で確認しています。
また、高速化については、エックスサーバー系列(エックスサーバー・sixcore・スターサーバー)で解除不可の「FastCGI」「OPcache」以外は、キャッシュ系のプラグインや高速化処理は使用していません。
コンテンツは、WordPress Codex で提供されている「WPテーマユニットテスト」というデータを利用しています。テキストの量もほどほど、画像や Youtube なども貼り付けられているので、現実のブログなどに近いデータ量になっています。誰でも利用できるコンテンツなので、今回検証した条件を再現することも可能です。
なお、基本的に月額料金が 1,000~2,000円程度のプランを検証の対象としていますが、今回もスターサーバー・ロリポップ!・さくらインターネットに関しては、月額500円台の「スタンダード」プランを使用して検証しています。これは、全プランの中でもユーザー数が一番多いこと、上位プランより性能がいい、という 2つの理由からです。
また、計測後にお名前.comレンタルサーバーのプランがリニューアルしましたが、今回は旧プランでの計測結果を掲載しています。
WordPressサイトの表示速度比較
では、WordPress サイトの表示速度を比較してみましょう。
チェックする項目は「平均表示速度」で、それを元に順位付けしています。当然、「平均表示速度」が速いほど、パフォーマンスの高いサーバーということになります。
最速で表示できた値と最も遅かった値もあわせて掲載していますが、順位付けはわかりやすいように平均表示速度だけを基にしています。
以下にその結果を、個人向けサーバーと法人向けサーバーに分けて掲載します。
個人向けサーバーのWordPress表示速度比較
サーバー名 (プラン名) |
平均表示速度 (秒) |
最小値 (秒) |
最大値 (秒) |
総合順位 |
---|---|---|---|---|
エックスサーバー (X10/スタンダード) |
2.83 | 2.25 | 9.99 | 1 |
heteml (ベーシック) |
2.84 | 2.13 | 7.56 | 2 |
mixhost (スタンダード) |
2.89 | 2.15 | 15.18 | 3 |
ConoHa WING (ベーシック) |
2.90 | 2.40 | 4.94 | 4 |
ロリポップ! (スタンダード) |
2.99 | 2.45 | 4.85 | 5 |
ColorfulBox (Box2) |
3.04 | 2.56 | 7.54 | 6 |
スターサーバー (スタンダード) |
3.13 | 2.27 | 7.96 | 7 |
お名前.comレンタルサーバー (SD-11) |
3.40 | 2.72 | 5.13 | 8 |
さくらのレンタルサーバ (スタンダード) |
4.78 | 3.17 | 7.23 | 9 |
※無断転載禁止
2019年の測定でも、エックスサーバーと heteml は安定の好成績です。
3位以下には、昨年後半に新規リリースした ConoHa WING が食い込んでいます。ConoHa WING はサーバーの応答速度はダントツに速いのですが、WordPress の表示速度となると、やはりトップには追いつけていないのが残念なところです。
また、中盤は多少の入れ替わりはあるものの、下位のお名前.comレンタルサーバーとさくらのレンタルサーバも変わりはありません。お名前.com は、プランのリニューアルがあったので、後日あらためて調査してみたいと思っています。
法人向けサーバーのWordPress表示速度比較
サーバー名 (プラン名) |
平均表示速度 (秒) |
最小値 (秒) |
最大値 (秒) |
総合順位 |
---|---|---|---|---|
sixcore (S1) |
2.53 | 1.87 | 5.30 | 1 |
WADAX (TypeB) |
2.98 | 2.00 | 11.96 | 2 |
iCLUSTA+ (ミニ) |
3.76 | 2.42 | 15.67 | 3 |
※無断転載禁止
法人向けは、個人向けに比べると全体的に遅めです。個人向けのほうがユーザー数が多いこともあり、スペックアップも個人向けのほうが優先される傾向がありますので、ある意味想定内と言えるでしょう。
その分、サーバー1台ごとのユーザー数が抑えられているなど、サーバーに負荷がかかった時の安定性は高いのが法人向けサーバーの特徴です。
sixcore と WADAX は平均表示速度が 2分台に収まっているので、いずれのサーバーでも遜色はないと思いますが、昨年より若干成績がよかったものの、iCLUSTA+(アイクラスタプラス)は上位と比較すると見劣りするため、ユーザーに離脱される可能性があることを考えると、やはり厳しいと言えるでしょう。
なお、CPI(シェアードプランACE01)については、どうやら IPS やファイアウォールレベルでモニタリングを遮断されてしまったようで、計測ができませんでした。会社側に依頼しないとモニタリングができなさそうなので、後日測定を実施できたら公開したいと思います。
2018年より2019年が速度が遅くなっている理由
平均表示速度 | 2018年 | 2019年 |
---|---|---|
個人向け | 1.64~2.67 | 2.83~4.78 |
法人向け | 1.97~4.55 | 2.53~3.76 |
上の表を見てもらえるとわかる通り、2018年の調査時と比べて、個人向け、法人向けに限らず、ほぼすべてのサーバーにおいて平均表示速度が遅くなっていました。
サーバーには個体差がありますが、昨年と利用しているプランやコンテンツが同じであること、またすべてのサーバーで速度が落ちていることを考えあわせると、サーバー自体の性能が落ちているわけではなく、他の要素が影響していると考えられます。
昨年と比べて変更があった中で、表示速度に大きな影響を与えている可能性があるのは、「WordPress のテーマとバージョン」と「PHP のバージョン」です。
(実際に測定していないので断言はできませんが)基本的に PHP は前回測定した 7.0よりも 7.2 のほうがパフォーマンスが高いため、WordPress のテーマかバージョンが速度低下の原因の可能性があります。
WordPress のテーマ(Twenty Seventeen → Twenty Nineteen)も影響している可能性はありますが、どちらかというと 5.0 へのバージョンアップ時にインパクトの大きい変更が加えられた「WordPress のバージョン」が影響している可能性が高いと考えています。
ただ、セキュリティ上は古いテーマを使い続けるのは得策ではないため、たとえバージョン 4より遅くても、やはりバージョン 5以上を使うしかありません。その分、サーバーはできるだけ速いものを使いたいですね。
まとめ
結果としては、昨年もトップを占めたエックスサーバーと sixcore が、それぞれ個人向けと法人向けで最上位にランクインして、その強さを見せてくれました。また、個人向けの heteml、法人向けの WADAX や CPI なども、今回はかなり頑張って良い成績を上げてくれています。
上にも書いたように、今回は特に WordPressのテーマと思われる影響で、昨年よりもサーバーごとの大きな差がなくなっていますし、どのサーバーもおおむね 3分以内には収まっています。
下位のサーバーを除き、いずれのサーバーも体感的に大きく差はありませんし、使用するうえで遜色はありません。ただ、コンテンツ量が多くなればさらに差がつく可能性はありますので、やはりできるだけ速いサーバーを選ぶほうがいいです。
中でも、毎回安定して速い速度を出している、個人向けのエックスサーバーや法人向けの sixcore は、おススメのサーバーと言えるでしょう。(※ sixcore はサービス終了のため、現在は「エックスサーバービジネス」がおすすめ)