2018年6月13日に、エックスサーバーがサーバーのハードウェア増強を行いました。
今回は、CPU にまだ他社ではほとんど利用されていない、最新鋭のサーバー用プロセッサー「Intel Scalableプロセッサー」を採用し、すでに最高レベルであったメモリ容量をさらに増強しました。
ここでは、その詳細と新環境のサーバーにおけるパフォーマンスの向上具合を、独自検証データをもとに、チェックしてみたいと思います。
エックスサーバーのスペック変更点
まず、今回行われたエックスサーバーのスペックにおける変更点を見てみましょう。
変更点 | 概要 |
---|---|
Intel Scalableプロセッサーの採用 | CPU性能が約1.5倍に向上 20コア→24コア |
搭載メモリの増強 | 192GB → 256GB |
大幅なディスク性能の向上 | 従来の最大4.6倍に向上 |
Intel Scalableプロセッサーの採用(20→24コア)
まず、サーバーの核である CPU に、Intel の新規格である Intel Scalableプロセッサーが採用されました。
この Intel Scalableプロセッサーは、クラウドコンピューティングや AI(人工知能)などの、非常に高度なケースに使われることも想定しており、サーバー向けプロセッサーのターニングポイントになるとされています。
これまでエックスサーバーでは、2012年にリリースされた、Xeon E5 シリーズが使われていましたが、その後継に当たる Intel Scalableプロセッサーでは、過去のシリーズと比較して、1.5倍のパフォーマンス向上が実現できるとされています。
搭載メモリの増強(192→256GB)
CPU の変更に伴い、メモリも「192GB → 256GB」へと大幅に増強されました。
エックスサーバーは共用サーバーですので、1台のサーバーの CPU やメモリなどのリソースを、複数のユーザーで共有しています。そのため、メモリのサイズは大きければ大きいほどいいですね。
この 256GB というサイズは、現時点において、共用サーバーにおける最高のスペックです。
大幅なディスク性能の向上
さらに、ディスク性能も、従来の最大4.6倍と、大幅に向上したと発表されています。
ただ、詳細な変更点について、エックスサーバーのサポートに問い合わせてみたのですが、残念ながら内部情報という理由で、具体的な情報をもらうことはできませんでした。
今回実施した測定条件の詳細
では、早速、エックスサーバーの新スペック環境でのパフォーマンス結果を見ていきたいと思いますが、まずは測定した条件を挙げておきます。
項目 | 詳細 |
---|---|
利用プラン名 | X10プラン |
WordPress のバージョン | ver.4.9.5 (以前のデータは 4.9.4) |
WordPress のテーマ | Twenty Seventeen |
WordPress プラグイン | WP Multibyte Patch / Akismet / Hello Dolly |
コンテンツ内容 | WPテーマユニットテスト (すべてのコンテンツをトップページに表示した状態) |
測定ツール | monitis 測定元サーバー(東京) |
測定期間 | 7日間 |
測定内容 (安定性) |
httpリクエストへの応答状況 (60秒毎にリクエスト実施/10秒でタイムアウト)) |
測定内容 (表示速度) |
WordPress サイトの表示速度 (20分ごとに計測を実施) |
今回、新たに測定したデータと、今年の3月に行った一斉調査時の測定結果を比較します。
唯一、WordPress のバージョンが異なりますが、マイナーアップデートですし、パフォーマンスへの影響はないと考えています。また、プラグインに関しては、WordPress をインストールした際に導入済みのもので、それ以上の意味はありません。
コンテンツは、WPテーマユニットテストというデータを利用しています。テキストもほどほどの量があるほか、画像や Youtube なども貼り付けられているため、実際のブログなどに近いデータ量になっています。
高い安定性はそのままで応答速度が大幅アップ!
まず、Webサーバーの応答速度(httpリクエスト)について見てみましょう。
「応答なし回数」は、Webサーバーから応答が返らなかったり、大幅に遅延したりしたケースの回数で、回数が少ないほうが安定しています。
また、「平均応答速度」「最速」「最遅」は、Webサーバーから応答が返ってくるまでの速度で、数値が小さいほど応答が速いため、安定性も高いことを意味しています。(単位はすべて「ミリ秒」)
応答なし回数 | 平均応答速度 | 最速 | 最遅 | |
---|---|---|---|---|
旧環境 | 0 | 392.7 | 297.0 | 1905.0 |
新環境 | 0 | 296.2 | 258.0 | 5271.0 |
差分 | ±0 | +96.5 | +39.0 | -3366.0 |
※単位は「ms」(ミリ秒) ※無断転載禁止
まず、「応答なし回数」ですが、エックスサーバーはもともと非常に安定しているサーバーで、応答なしの回数はゼロだったので、特に変化は見られません。
次に、応答速度ですが、平均で約 100ミリ秒ほど高速化しており、最速の値も上がっています。
ただ、遅い時は従来の2.5倍くらいの値が出ていたので、ちょっとブレが大きかったですね。これは、計測を行ったのが、リリース直後で、まだ調整段階だった可能性もあるかと思います。
WordPress の表示速度も底上げされた
続けて、WordPress を使用したサイトの表示速度にどれくらい影響があったのかを確認してみましょう。こちらは、単に数値が小さいほうが速いです。
平均表示時間 | 最速 | 最遅 | |
---|---|---|---|
旧環境 | 1.73 | 1.42 | 30.01 |
新環境 | 1.71 | 1.28 | 17.11 |
差分 | +0.02 | +0.14 | +12.90 |
※単位は「s」(秒) ※無断転載禁止
平均表示速度はほぼ変わりありませんが、最も速い値と遅い値が、いずれも向上しています。特に最遅の値が、約半分くらいに縮まっていますので、平均的に底上げされているように見えます。
平均の表示速度が速くても、ブレが大きいとサイトを見に来たユーザーの離脱率も上がってしまう可能性がありますので、全体的に速くなったとしたら、とてもよい結果と言えるでしょう。
まとめ
以上、今回のスペックの変更点の詳細と、実際のパフォーマンスの変化を確認してみましたが、なかなか期待できそうな雰囲気がうかがえました。
ただ、エックスサーバーは元から非常にスペックが高く、パフォーマンスがいいため、安定性も表示速度も、ともに平均値には驚くような変化は見られませんでしたが、全体に底上げされたようなイメージがありましたので、より重い処理が必要な大容量のサイトなどで確認すると、もう少し違った変化が見られるかもしれません。
それにしても、最新鋭のサーバーは非常に高価なのですが、それにも関わらず、常に最高スペックのサーバーをユーザーに提供し続けてくれるエックスサーバーの気概には感服しますね。