医師は、その職業上の特性もあり、ストレスに悩まされやすい職業だといえます。ここでは「医師とストレス」をテーマに、「なぜ医師がストレスを抱えやすいのか」「ストレスを放置することで起こること」「ストレスの解消方法」などについて解説していきます。
「人の健康」を守るためにも、医師は医師自身の健康を守らなければなりません。そのためにできることを考えていきましょう。
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医師の約25％が「人間関係」にストレスを抱えている！
独立行政法人 動労度政策研究・研修機構が取ったデータによれば、「職場の風土や人間関係に悩んでいる」と答えた層が、全体の約25％を占めています。
また、「患者様からの理不尽な要求」を「人間関係」と捉えるのだとすれば、実に2人に1人程度の医師がこれに悩まされているという現状があります。
激務であることに加えて、このような「人間関係のストレス」が、医師の身心の健康を脅かしているという現実があります。
医師が人間関係でストレスを抱える主な原因
医師のストレスの要因のひとつとして、「人間関係のストレス」があります。この「人間関係のストレス」に、疲弊してしまう医師は決して少なくはありません。
医師は、その職業柄、人と関わり合うことが非常に多い職業であるからです。
上下関係が大変
勤務医として働いている場合、「上下関係」に悩まされる可能性が高くなります。
医師の出世には当然「実力」は大きな判断要因とはなりますが、周囲の人との関係を円滑に築けるかどうかも判断材料となります。
なぜなら医師は、手術などにおいてほかの医師と連携をとることが多く、「周囲と上手くやっていけること」もまた医師としての大切な素養のうちのひとつだと判断されるからです。
看護師や病院のスタッフとの関係が難しい
医師と一緒に働く職業として、「看護師」があります。また、医療事務や理学・言語・作業療法士と関わることもあるでしょう。
彼らはその多くが医師の指示を仰ぐ立場にありますが、当然に高い職業意識を持ち、仕事に打ち込んでいます。そのため、彼らの意見を無視することなく、一緒により良い医療を行っていくための調整力も医師に求められます。
患者さんとの関わり方がストレスになる
医師は、患者さんの健康にもっとも深く関わることになる職業です。しかし患者さんには患者さんの意志があり、それが医師の治療方針と合致しないこともあります。
また、医療上必要な指示であるにも関わらず、患者さんがそれを守らないこともあります。理不尽な要求をされる可能性もゼロではありません。
このような状況は、医師に大きなストレスを与えます。
度重なる医局の人事異動による人間関係の構築が難しい
いわゆる「医局」に所属している場合、人事異動の辞令を断ることが非常に難しくなります。
しかし人事異動を繰り返していると、そのたびに、新しい環境で人間関係を構築していかなければなりません。「古巣を離れなければならなくなった」と言う場合も、「新しい場所に次々と異動させられる」という場合も、どちらも医師のストレスとなるでしょう。
人間関係以外に医師の抱えるストレス
「医師として働く場合、何を一番ストレスに感じているか」という設問のアンケートは、たびたび行われています。そしてそれぞれで違う回答が出ています。
「人間関係のストレス」を挙げる医師はいずれのデータでも多く、独立行政法人 労働政策研究・研修機構では3位および8位、Dr,転職なびのデータでは1位に入っています。
ただ、それ以外にも、医師を悩ませる原因はあります。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の出したデータでは、1位と2位に入っているのが「当直」「長時間勤務」です。
また、民間の「Dr,転職なび」が取ったデータでも、2位には「業務量の多さ」、4位には「睡眠時間が足りないこと」と、「激務」を表す項目がランクインしていました。
「激務」「業務量の多さ」は、医師にとって非常に大きな問題です。医師のなかにはオンコールや過剰な残業に悩まされている人は決して少なくはありません。そしてこれは、4位の「十分な休息が取れないこと」にも直結します。なかにはプライベートの時間がほとんど取れず、100日間連続勤務を課せられた人すらもいます。
なお、Dr.,転職ナビの統計では、3位には「給与面」、5位には「キャリアについて」がランクインしています。医師はあらゆる職業のなかでも年収が高い職業であるとされていますが、研修医時代は決して高くなく、初期研修医時代では450万円程度、後期では700万円程度です。
また、1000万円を突破するようになっても、「仕事内容と釣り合っているか」という点で疑問を抱く人もいるでしょう。
5位の「キャリアについて」についても見ていきましょう。医師は、医局に所属することもできれば、町のクリニックに務めることもできます。また、開業をするという選択肢をとることもできますし、福祉施設などを勤務の場所として選ぶこともできます。このような「選択肢」の多さのなかで、自分の進むべき道に迷う人もいると思われます。
出典：医師の転職情報サイトDr,転職なび「【調査】353名の医師に聞いた！ストレスを感じる要因とメンタルケア」
ドクタービジョン「研修医・専攻医の平均年収はいくら？給料に関するよくある質問にも回答」
ストレスを放置すると危険な理由
ストレスを放置することは、医師にとって非常に危険です。なぜならストレスを放置することにより、仕事への影響が出たり、精神疾患になったりする可能性が極めて高くなるからです。
ストレスを放置すると危険な理由についてそれぞれ解説します。
仕事へ支障が出る
「ストレス」は、仕事に大きな影響を与えます。ストレスを抱えている人は、仕事の効率が明らかに落ちるというデータも多く発表されています。
医師という職業においては、この「仕事の効率が低下する」「仕事に集中ができなくなる」といった負の変化は非常に大きく重大なものだと考えられます。
このような状態に陥ってしまうと、患者さんの病変を見落としてしまったり、手術のときに大きな失敗を起こしてしまったりする可能性も高くなるからです。そしてそれは、文字通り「生命の危機」に直結します。
うつ病などの精神疾患になりかねない
「医師がどれほどのストレスを抱えているか」については詳しくは後述しますが、医師はうつ病などの精神疾患を患いやすい状況にあるといえます。うつ病に代表される精神疾患は、一度患ってしまうと完治が難しいものもあります。
また重症化することで、医師としてのキャリアを積んでいけなくなったり、医師という職業そのものを辞めてしまうことを考えざるをえなくなったりすることもあります。また、それのみならず、医師本人の命が危険にさらされることすらもあります。
医師が人間関係のストレスを抱えたときの対処方法
医師がストレスを抱えたときに、とるべき対処方法をまとめます。
なお紹介する対処方法は人間関係以外のストレスへの対処方法としても利用できますが、特に人間関係がらみのストレスに対して有用です。
自ら積極的にコミュニケーションを取る
人は、繰り返し接触する相手に対して、親近感を抱くという特性を持っています。「単純接触効果」と呼ばれるこれは、もちろん職場でも有効です。
人間関係に悩んでいるときこそ、積極的に人に声を掛けてコミュニケーションをとっていきましょう。それによって相手も、好意的な感情を抱きやすくなるはずです。
ポジティブな声かけや会話をする
「人と接触することによって、人間関係のストレスやあつれきを解消できる」としましたが、これは当然、「マイナス（ネガティブ）なアプローチ」では逆効果です。
相手に話しかけるときはポジティブな話題を選び、プラスのアプローチを試みるようにしましょう。相手のしてくれたことに感謝したり、相手の仕事を褒めたりすると、人間関係は円滑にいきやすくなります。
周りの先輩医師に相談する
先輩医師は、技術だけでなく、人間関係の面でも後輩医師をリードする立場にあります。「医師の多くが悩みを抱えている」ということは、言い方を変えれば、「先輩医師も悩みを抱えてきた」ということです。
後輩医師の持つ悩みは、多くは先輩医師が一度は通ってきた悩みです。このため、思い切って周りの先輩医師に相談することで、解決策が見えてくる場合もあります。
また、直接的な解決策ではなくても、「人に話して、同意してもらえたこと」がストレスの軽減につながることもあります。
人間関係のストレスを根本的に解決するためには「転職」がおすすめ
人間関係のストレスを根本から解消するための方法は、「転職」です。人間関係は、「自分が変わりさえすれば、相手も100％変わる」とは言えないものだからです。
すでに述べたような声かけや先輩への悩み相談をしても状況が変わらない可能性もありますし、場合によってはもっと深刻化することもあります。
このような場合は、新天地を目指して転職を考えましょう。幸い、医師はその職業のニーズの高さから、常に売り手市場の状態にあります。医師免許を持っていれば転職先に困ることはありませんし、労働条件の悩みも一度に解決することすらあります。
現在の職場の人間関係に疲れた人は、人生の良い転機だと捉えると良いかもしれません。
人間関係のストレスを抱えた医師におすすめの転職エージェント
医師向けの転職エージェントは数多くあり、どこも数多くの非公開求人と優秀なスタッフを用意しています。
数多くある医師向け転職エージェントのなかから、2つの医師専門転職エージェントを紹介します。
エムスリーキャリア
| エージェント名 | エムスリーキャリアエージェント |
| 求人数 | 常勤・非常勤をあわせて22000件前後+非公開求人 |
| 対応雇用形態 | 常勤・非常勤 |
| 対応診療科目 | 内科全般・外科全般・ほか小児科や産婦人科、耳鼻咽喉科や眼科など |
| 対応エリア | 全国 |
| 拠点 | 東京都港区虎ノ門4-1-28虎ノ門タワーズオフィス |
| 公式HP | https://agent.m3.com/ |
医師会員数32万人以上という、膨大な数の会員医師を抱えているのが「エムスリーキャリアエージェント」です。
数多くの求人情報を取り揃えていて、「当直なし」「週4日でゆったり勤務」「休日しっかり」などのように、プライベートを優先した働き方を選べるようになっているのが特徴です。
また、年収面を重要視する医師向けに、「1800万円以上の求人」などでもソートをかけられるようになっています。
「自分らしい働き方」を目指して転職したい人にとっては、非常に使いやすい医師向け転職サイトといえるでしょう。
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医師転職ドットコム
| エージェント名 | 医師転職ドットコム |
| 求人数 | 常勤・非常勤をあわせて43,000件以上 |
| 対応雇用形態 | 常勤・非常勤 |
| 対応診療科目 | 内科全般・外科全般・ほか小児科や産婦人科、耳鼻咽喉科や眼科など |
| 対応エリア | 全国 |
| 拠点 | 北海道札幌市中央区北1条西5丁目2番地興銀ビル9F（本社） |
| 公式HP | https://www.dr-10.com/ |
医師求人ドットコムは、なんと四半世紀以上にも渡って活動を続ける医師専門エージェントです。求人数は43000件以上と他の追随を許さず、公開求人であっても2500万円以上の求人情報が数多く表示されています。ちなみに、非常勤講師で検索した場合は、「日給80000円以上」という求人情報もヒットします。
また転職のノウハウなどを記した記事も展開されているため、「転職」を意識するのであれば、一度は目を通して置くとよいでしょう。
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医師の抱えるストレスの状況
医師の抱えているストレスの状況は非常に深刻です。医師のうちの2人に1人がすでにほかの医師に健康相談をしている状況ですし、「医師の卵」とでもいうべき医学生のうちの4人に1人はうつ病にかかっています。
それぞれ詳細について解説していきます。
医師の2人に1人以上がほかの医師に健康相談をしている
日本医師会 勤務医の健康支援に関する検討委員会の「勤務医の健康の現状と支援のあり方に関するアンケート調査報告書」によれば、「5人に1人が、自分を不健康だ」と応えているとしています。また、10人のうち、5人～6人という過半数を超える数が、他の医師に健康状態のことを相談しています。
さらに、抗うつ剤の処方が検討される中等度以上のうつ病状態にある人は7％をこえています。さらに衝撃的な数字として、「27人に1人は自殺のリスクを抱えている」と報告が為されています。
出典：日本医師会 勤務医の健康支援に関する検討委員会「勤務医の健康の現状と支援のあり方に関するアンケート調査報告書」
リクルートドクターズキャリア「医師のためのメンタルヘルス」
医学生の4人に1人がうつ病をり患している
医学生の4人に1人がうつ病をり患している状況は、決して日本独自のものではありません。ハーバード大学が研究・発表したデータによれば、「医学生のうちの3人に1人はうつ病をり患している」というデータが出たのです。医学生のうちの27.2％がうつ病を罹患していたのです。
世界的にみたとき、うつ病の罹患率は成人でだいたい5％程度だと考えれば、この数字がいかに大きいかが分かるでしょう。
出典：MT MEDICAL TRIBUBNE「あなたの健康百科 医学生の3割がうつ病ー47カ国研究から」
人間関係のストレスを抱える医師がすぐにできるおすすめのストレス解消方法とは
人が抱えているストレスを解消するために有効な方法として、3つ紹介します。
睡眠をとる
「睡眠」は、もっとも手軽でもっとも効果的なストレス解消方法のうちのひとつです。リラックスできる環境を整えて、良質な睡眠をしっかりとるようにしましょう。
また、「すでに自力で眠ることができない」眠りが非常に浅い」などのような場合は、受診後に処方された睡眠薬を利用するのもひとつの手です。
運動をする
運動は、心地よい疲労と安眠をもたらします。またそれだけでなく、運動そのものがストレスを解消する手段ともなりえます。定期的な運動習慣を取り入れれば、ストレスを抱え込みにくくなります。
なお運動の強度は、その人の今の状況によって異なります。有酸素運動などの軽い運動でも構いませんし、もともとスポーツをしていて今も筋力がある人ならばある程度運動強度の高い種目を試してもよいでしょう。
入浴をする
忙しくなると、シャワーだけで済ませてしまう人も多いと思われます。しかしシャワーだけでは、疲れをとりきることは難しいものです。入浴は体をリラックスさせて、心地よい睡眠に連れて行ってくれるものでもあります。
入浴剤なども適宜利用して、バスタイムを楽しみましょう。
「人間関係に悩んでいる医師」に関するよくある質問
「人間関係に悩んでいる医師」に関するよくある質問と、その答えを記していきます。
ひとつずつ見ていきましょう。
開業医になれば、人間関係の悩みからは解放される？
「開業医になれば、人間関係の悩みからすべて解消される」というのは思い込みです。
開業医になっても、スタッフや患者さん関係の悩みは持ち続けることになります。また、勤務医時代には持つことのなかった「経営の悩み」などものしかかってきます。
ただ、上下関係に悩むことはほぼなくなるでしょう。
医師が悩みを抱えやすい原因とは？
医師という仕事が、「非常時の対応」を求められやすいため、ストレスを溜めやすい傾向にあります。ただでさえ仕事が忙しいなかで、この「非常時の対応」に向きあうことになるため、プライベートや休むための時間が削られます。
また、一人ひとりの命を背負っているという職業的な重圧もあります。そこにさらに、職場の人間関係のバランスをとらなければならないというタスクが加わるため、悩みを抱えやすくなります。
「医局に入らない」という選択肢は、あり？ なし？
医局に入ることはたしかにキャリアや研究を積むうえでは有用な選択肢ですが、医局に入らなかったからといって医師が続けられなくなるわけではもちろんありません。
また多くの医師がキャリアアップのために目指す「専門医」もまた、医局に所属していなければ取得できないという性質の資格ではありません。
「人間関係」のストレスから脱出したい医師は転職も検討！
職場の人間関係のストレスを根本的に解決する唯一の手段は「辞職」です。辞職〜転職をすれば人間関係がリセットされますから、ストレス源であった人たちや組織から離れることができます。医師は、その職業のニーズの高さゆえ、転職先に困ることはまずありません。
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